今日は特別な日だったの。60歳になって初めて友人たちの前でドレスを着るなんて、自分でも少し大胆だと思ったけれど、どうしてもこのシルバーのメタリックドレスが着たかった。
クローゼットの中でずっと眠っていたドレス。試着したときのあの感覚、まるで私が輝いているように思えたのよ。でも正直、少し怖かった。「この年でこんな派手なものを着てもいいのかしら?」ってね。
鏡の前でじっと自分を見つめた。ドレスの光沢がライトに反射して、顔が少し明るく見える。そうね、髪はアップにしてシンプルなピアスをつければいい。誰にどう思われても、今日だけは自分のためにこのドレスを着てみようって、思い切ったの。
パーティー会場に入った瞬間、息が詰まる思いがしたわ。友人たちの視線が私に集中しているのを感じたの。「うわ、目立ちすぎたかも」と思ってドアの影に隠れたくなった。でも、次の瞬間よ。
「すごく素敵じゃない!」
「そのドレス、どこで見つけたの?」
「あなた、ほんとに輝いてるわ!」
周りの友人たちが次々に声をかけてくれたの。最初は恥ずかしくて、少しうつむいてしまったけれど、心の中がじわじわ温かくなってきた。
「本当に似合ってるわ。私も60歳になったらこんなドレスが着たい!」なんて言われたときには、思わず笑顔がこぼれてしまったの。
会場はシャンデリアの柔らかな光で満たされていて、音楽も心地よく響いていたわ。私はワイングラスを手に取り、友人たちと談笑するうちに、だんだんと自分の緊張がほぐれていくのを感じた。"60歳"という年齢が、重りじゃなくて勲章のように思えてきたのよ。
でも、心の奥底にはまだ葛藤が残っていたの。「本当にこれでよかったのかしら? 若作りに見えたりしない? みんな無理して褒めてくれてるんじゃない?」
そんなことを考えながら、ふと窓の外を見たの。夜空に浮かぶ満月が私を見ているみたいだった。その瞬間、心の声が聞こえたの。
"あなたはよくやったわ。誰が何と言おうと、自分を大切にすることは間違いじゃない。"
そのとき、友人の一人がそっと肩に手を置いて言ったの。
「今日のあなた、ほんとに素敵よ。自分のためにこんなに素晴らしい選択をしたなんて、私には真似できないわ。」
私は微笑んで答えたの。「ありがとう。本当は少し怖かったけど、思い切ってよかった。」
夜が更けるまで、私はそのドレスを着て会話を楽しみ、笑顔で写真に写った。帰り道、鏡越しに見た自分の姿は、少し前の私とは違って見えたの。
そう、このドレスはただの服じゃなかった。私に自信と新しい扉を開いてくれるきっかけをくれたのよ。
これからも少しずつ、自分のために素敵な選択をしていこうって、そう決めた夜だったの。
翌朝、鏡の前で昨晩の余韻に浸りながら髪を整えていると、ふとスマートフォンにメッセージが届いたの。友人たちから送られてきた写真には、私がドレスを着て笑顔で楽しんでいる姿が写っていた。
「昨夜は最高だったわ。また集まりましょうね。」
「あなたの笑顔、本当に素敵だったわ。あのドレス、私も着てみたくなっちゃった。」
そのメッセージを見て、胸がいっぱいになったの。私が勇気を出して一歩踏み出したことが、こんなにも喜びを生むなんて思わなかった。
「本当にありがとう。次回のパーティーも楽しみにしてるわ。」そう返信してから、私はお気に入りのティーカップに紅茶を注いだ。
カップを手にした瞬間、また新しい考えが浮かんだの。60歳だからこそ、これからはもっと自分を楽しませる時間を作ろうと。もっと好きなものを身にまとい、好きな場所に出かけて、素敵な瞬間を増やしていきたい。
このシルバーのドレスは、その第一歩だったのかもしれない。そして、その輝きはこれからの私を照らし続けてくれるはず。
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