「ねぇ、このパンティー、どう思う?」
静かな夜、薄暗いランプの光がぼんやりと部屋を照らす。私はドレッサーの前に座りながら、手にしたレースのパンティーをそっと撫でていた。白いレースが柔らかく指に絡み、繊細な刺繍が施されたそれは、まるで花びらを思わせるほど美しかった。
「あの人、気づくかな……」
私の心は、揺れていた。パンティーを手に取るたびに、胸の奥でくすぶっている何かが膨れ上がる。この小さな布切れが、私の心を隠すための盾なのか、それとも鏡なのか、わからなくなる。
「ほら、これ、私の一番のお気に入りなのよ」
自分自身に語りかけるように、鏡の中の自分に微笑みかける。レースのデザインは完璧で、刺繍の一つひとつに意味が込められているように感じた。けれど、その裏側には、見せたくない秘密がある。誰にも知られたくない、隠し続けてきた嘘。
「ねぇ、彼に会うたびに、このパンティーを履くんだよ。どうしてだと思う?」
笑いながら自問自答する。もちろん、答えなんて決まっている。このレースのパンティーは、私の心の中で、彼との距離を縮めるための象徴だった。それでも、本当の私を見せることなんてできない。レースの下に隠された私の心、それはただの飾り。嘘で塗り固めたもの。
「でも、仕方ないよね。彼、私のことを褒めてくれるんだもの。『そのレース、とっても綺麗だね』って」
彼の言葉が頭の中を巡る。彼の笑顔、優しい眼差し、そしてその指が触れるたびに感じる温もり。だけど、その温もりに応えるために、私はいつも嘘をついている。
「ねぇ、本当の私、見せてもいいのかな?」
パンティーを膝に広げて、深く息をつく。嘘に嘘を重ねてきたけれど、いつかその嘘が暴かれる日が来るのだろうか。彼に本当の私を見せたとき、彼はどうするだろう?このレースの下に隠された真実を知ったら、まだ私を愛してくれるだろうか。
「ああ、そんなこと考えても無駄よね。だって、彼は私が作ったこのレースに夢中なんだもの」
苦笑しながら、パンティーを持ち上げ、もう一度その刺繍をじっと見つめる。花びらの模様が浮き上がり、まるで嘘のように美しい。誰もがその美しさに惹かれる。でも、花びらのように繊細で、一度触れると壊れてしまうほど脆い。
「彼が好きなのは、このパンティーに包まれた私じゃなくて、このレースそのものかもしれない。私の心なんて、どうでもいいのかな?」
部屋の中に静けさが戻る。私はパンティーをそっと引き寄せ、肌に触れる感覚を楽しんだ。レースが私の肌に沿い、刺繍が優しく包み込む。けれど、その温もりが、どこか冷たく感じるのはなぜだろう。
「もう少しだけ、この嘘を続けてもいいよね。彼の前では、この花びらの嘘を演じ続けるの」
そう心に決め、私はレースのパンティーを丁寧に畳んだ。ドレッサーの引き出しにそっとしまい込み、また明日、彼に会うために。嘘をつき続けるために。
「ねぇ、もし私が嘘をやめたら、どうなるんだろう?」
答えのない問いかけが、夜の静寂に溶けていく。
コメント
コメントを投稿